今年の3冊(2002年)

今年もいろんなことがあった。本も売るほどたくさん出た。というわけで、今年に出た本のベスト3を(順不同)。

エリック・ホッファー自伝―構想された真実

エリック・ホッファー自伝―構想された真実

磔のロシア―スターリンと芸術家たち

磔のロシア―スターリンと芸術家たち

憂い顔の童子

憂い顔の童子

鮮烈な印象を残すホッファーの自伝は、今後も手放すことができないだろうと思う。本書の反響から復刊されたと思われる『波止場日記――労働と思索』、『現代という時代の気質』とともに、眠れない夜などに何度でも読み返すことになるだろう。「またいつか読み返すのが楽しみ」になる本など、そうあるものではない。

『磔のロシア』の出現は驚きであった。まるで、まわりの風景とはまったくなじまないなにか異様なものが突如として姿を現したかのようだった。本書はスターリン時代のソ連に生きた芸術家たちの受難とサヴァイヴァルの記録。芸術家であることがそのまま「二枚舌」を要請してしまうような場面で、芸術家たちがいかにしてそれに抵抗したか、そして落胆しまた熱狂したか。

大江健三郎の新作。ドタバタぶりが悲愴であるとか、レファランスの取り込み方が安易であるとか言われているけれども、この作品をそうした次元で読むしかないのであればそうなろう。しかし、生きるとは長江古義人のように愚劣さと安易さ、そこからにじみ出る滑稽と悲愴のただなかで悪あがきをすることではないのか、つまり『ドン・キホーテ』後編を歩むことではないのか。深さと癒しを拒否する大江健三郎の悪あがきを、断固支持。

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