鎧と夢

  

  • ※左:「中世の鎧」。
  • ※中:冷酒かい!ってくらいなみなみと注がれた「お冷や」。
  • ※右:トイレで見かけた「グラマー☆エンジェルス」。

哲劇ミーティング。

新宿の「珈琲西武」で待ち合わせる。なぜこの喫茶店が好きなのかといえば、もちろん珈琲がうまいからではない。そこには、なにがどうまちがってそうなったのだか知らないが、玄関に「ヨーロッパ中世の鎧」が立っているからである。

正直、こわいんである。めちゃくちゃこわいんである。そして目を逸らすことができないんである。しかし今日、鎧はそこにいなかった。われわれを出迎えてはくれなかった。

ミーティングの間中、鎧の不在が気にかかってしようがなかった。ひょっとしたら、鎧なんて最初からいなかったんじゃないか。人と車でごった返す新宿の喧騒にぽっかりと開いたブラックホールのようなこの喫茶店(実際、信じられないくらいガラガラなのである。ラカンジジェク風にいえば、ここは現実界への通路なのである)には、どうしても中世の鎧がいてほしい、いや、いてくれなくては困る……そんな風にわたくしは夢みていたにすぎなかったんじゃないか。すべてはわたくしの夢がつむぎだした幻(脳内鎧)だったんじゃないか。

「こ、ここ。……むかし、中世の鎧、あったよね?」

店を出るとき、清水の舞台から飛び降りるような気持ちで、思い切って、相棒に尋ねてみた。真相を知るのはおそろしい。しかし知らねばならない。

「ああ、あったね」

相棒は、こともなげに――「あの角にローソンあったよね?」「ああ、あったね」というくらい軽々と――答えた。

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