アンドレアス・ワグナー氏の新著『眠れる進化』に解説を寄せました。
- 【解説】アンドレアス・ワグナー『眠れる進化──世界は革新に満ちている』大田直子訳、早川書房、2024/9
原題はSleeping Beauties: The Mystery of Dormant Innovations in Nature and Culture。おもしろい本です。
地球生命史上、樹脂は40回、大臼歯は20回も「発明」された末にようやく成功をつかみ、ヒトは歴史上、温度計を7回、レーダーを6回も「発明」していた――革新(イノベーション)は決して特別なものじゃない! 進化生物学が解き明かす、この世界の隠れたルール
恐竜が地球上の王者として君臨していたころ、哺乳類のパイオニアが現れた。しかし、彼らが数多くの種に分かれ栄えるようになるのは、1億年近く経った後のことである。草の仲間は6500万年以上前には登場していたものの、世界中に繁茂するようになったのは2500万年前のことにすぎない。
なぜ生物の進化の多くは、膨大な休眠期間を経てから、ある時突然スイッチが入ったかのように繁栄を謳歌しはじめるのだろうか。著者は数学やコンピューターを駆使した最新の進化生物学の手法を通じて、自然界のイノベーションは、それが必要とされるよりずっと前に、頻繁に、しかも簡単にもたらされていることを証明する。さらに著者は、自然界のこの法則を人類のイノベーションにも適用する。人類の歴史上、温度計は7回、電報は4回、レーダーは6回発明されている。しかし、登場するタイミングを誤ったものは、歴史に残ることなく人知れず埋もれていく運命をたどるのだ。気鋭の進化生物学者が、自然界と人類の歴史に共通する隠れたルールを明らかにする。
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