科学史家の米本昌平さんによる『理不尽な進化』書評が、経済誌『週刊エコノミスト』にて掲載されました。ありがとうございます。
- 米本昌平「読書日記──進化論論議に切り込む“素人”の醒めた視点」、『週刊エコノミスト』2015年2月10日号
素人だからと卑下しているが、本質的に論争の上にある進化論の中身を、見事に俯瞰している。
「理不尽な」というタイトルの形容詞がまたいい。(…)専門の研究者は、こういう有能な予備校教師のような腑に落ちる説明はしてくれない。
科学評論としてなぜ良いのかと言うと、正統派の進化論理解に立ちながら、啓蒙臭がないことである。(…)他方、吉川氏の正統派に対する目は醒めている。これは、日本での次世代の進化論論議に、少なくない希望を託してもよい兆候ではないかと思う。
冒頭の「日本における知的活動の中で、全く欠落しているのが科学評論という領域である」という時代診断に始まり、拙著についての簡にして要を得た評言、そして氏の持論である「自然選択説=エーテル論」の紹介と、1頁まるまる盛りだくさんのじつに興味深い内容になっています。詳しくはぜひ本誌をご覧ください。最新号です。
氏の初期著作『バイオエシックス』(1985)はこの分野の必読文献で、私も大学入学直後に読んだ記憶があります。その後も『優生学と日本社会──生命科学の世紀はどこへ向かうのか』『バイオポリティクス──人体を管理するとはどういうことか』など、おもに優生学や先端医療の問題にかかわる著作から多くを学びました。近年では、ハンス・ドリューシュの翻訳『生気論の歴史と理論』の邦訳と著作『時間と生命──ポスト反生気論の時代における生物的自然』において、生気論の再解釈・再評価に取り組んでおられます。私にとっても、たとえばジル・ドゥルーズの哲学などにあらわれる「生気論の必然性」は興味深いテーマです。
- 作者: ハンス・ドリューシュ,米本昌平
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