いまさら5月号の話もないだろうということかもしれないが、昨日部屋を片付け中にたまたま発見し、読みふけってしまった。
プルースト『失われた時を求めて』の個人全訳で知られる鈴木道彦氏は、――わたしは不覚にもまったく知らなかったのだが――1960年代から70年代にかけて小松川事件にかんする論文を書き、金嬉老事件では裁判にもかかわった。プルースト学者がなぜ、またいかにして在日問題とかかわるようになったのか。
この記事は、鈴木氏が小松川事件について書いた論文「日本のジュネ」(1967)を読んで感銘を受けた上野氏が、「『会わせて、会わせて』とまわり中にいい回って」(p.7)実現した対談。プルースト研究のためのフランス留学、そこで出会ったアルジェリア戦争、そしてサルトルとファノン。彼らを介して鈴木氏は、日本にとってのアルジェリア=朝鮮と在日の問題に出会うことになる。ざっくばらんに語られる金嬉老との交流も、じつに興味深い。
今号から新連載の鈴木氏の回想録「越境の時――一九六〇年代私記」も、ぜひとも回想録を書いてもらいたいと考えた上野氏が「後ろからたきつけ」(p.12)て実現したものとのこと。上野氏のこういう手腕と実行力、あいかわらずすごいなぁ。
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コメント
今日は。旧版のファノン『地に呪われたるもの』の「解説」として書かれた鈴木道彦さんの「橋をわがものにする思想」についてかつて紹介したことがあるのでご笑覧ください。
http://d.hatena.ne.jp/sarutora/20041028#p2
sarutoraさん、こんにちは。ご教示ありがとうございます! さっそく拝読いたしました。わたしが読んだみすずライブラリー版では「ふつうの」解説になっていて、金嬉老についての記述があったとは知りませんでした。オリジナル版も読んでみます。
実は道彦先生にはフランス語初級を教わっていました……全然勉強しなかったので、当然できるようになりませんでしたが(大学3年生の時)。アランの「友情論」も読んでいたみたいです。(みたいって)
おお、贅沢なフランス語クラス(初級)ですね!