- (*)実在しません(為念
ほんとうに久しぶり――前回は学生時代だったから十年以上ぶりか?――に、「柔和な女」と「おかしな男の夢」を読んだ。前回は福武文庫版『ドストエフスキイ後期短篇集』の米川正夫訳、今回は下記の小沼文彦訳。
- ドストエフスキー「柔和な女――幻想的な物語」、『作家の日記 3』小沼文彦訳、ちくま学芸文庫、1997
- ドストエフスキー「おかしな男の夢――幻想的な物語」、『作家の日記 4』小沼文彦訳、ちくま学芸文庫、1997
- 作者: ドストエフスキー,小沼文彦
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
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短篇ふたつに10日間もかかってしまった。なにしろ同書を読めた(読むと決めていた)のは毎日の就寝前の20分間だけだったから(*)。ともにすばらしい作品であることに変わりはなかったけれど、まれに重要(とわたしには思える)箇所のセリフの翻訳が大きく異なっていたりして驚いた(翻訳書を読んでいれば何度でも出会う事態だが、そのたびに――思い入れのある作品であればなおさら――意表をつかれて驚く)。翻訳はむずかしい。
- (*)ちなみに、決めているのは「20分」という時間ではなく、「就寝前に読む」という習慣のほうである。最近のわたしは、本を布団に持ち込んだのち、だいたい20分くらい読んだあたりでそのまま眠ってしまうようにプログラムされている。it’s automatic.(©宇多田ヒカル)
ともにドストエフスキーの個人雑誌『作家の日記』に収録されたものだ(ちくま学芸文庫版で全6巻)。よく知られていることだけれど、「日記」といってもふつうの日記ではない。上記のような小説作品のほか、回想録やコラム、講演録、文芸評論、それに政治評論/社会評論(これが分量的にはいちばん多い)などが雑多に詰め込まれている。
ドストエフスキーは『作家の日記』について、こう語っている。
「現に目の前に生きている日常的な、それでいて非常に注目すべき現象がどれくらいあるかもしれません。しかもそれを解明することがそのまま雑誌の思想を明確にすることにもつながりかねないのです!」
「当面の時事問題の中で最も強い衝撃を受けたありとあらゆるものについての自分の印象を語りたい」
「この興味深い、しかもこの特異な時代に自分の意見を述べてみたいという、どうにも抑えがたい欲求にかられ」
――『作家の日記 1』訳者解説(pp.411-422)
つまりはドストエフスキー流「ブログ」である。
彼がいま生きていたなら、どんなブログを書いただろうか。それともこんな風潮には背を向けてブログなど書かなかったのだろうか。いやいや、ひょっとしたら作家にすらならなかったかもしれないな。
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◇哲劇メモ > [文学]
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コメント
わわわー。「柔和な女」っていうんですか?! 私はこれとカフカ短篇集の「ドブラートフ」を同じ頃に読んで、両方から心臓に悪いほどの衝撃を受けました(文字通り)。
ええ、筑摩書房版だと「柔和な女」なんです。河出書房版の「おとなしい女」のほうが有名かもしれませんね。
オハズカシー! ドヴラートフは現代ロシア(だったと思います)の意外と面白い小説を書く作家でした。カフカ『父の気がかり』中の謎の存在オドラデクと勘違い(どうやって?)。しかもカフカで恐怖だったのは『判決』です。失礼しました。
わたしも「父の気がかり」大好きです。ところで「ドヴラートフ」と「オドラデク」、……たしかに似てるような(連呼すれば