2014年に朝日出版社より刊行した『理不尽な進化──遺伝子と運のあいだ』が文庫になります。2021年4月12日発売。
- 吉川浩満『理不尽な進化──遺伝子と運のあいだ』ちくま文庫、2021/4
下記は当ブログ内の『理不尽な進化』特設ページ。
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ちょっとだけ抜粋します。「文庫版あとがき」より。
(前略)
もし本書の趣旨になんらかの変更を加えようとすれば、別の本を書かなければならなくなるだろう。現にいまの私は本書とはだいぶ異なる内容のものを、だいぶ異なるスタイルで書いている。本書(単行本)の刊行そのものが、そのような変化の原因となったと考えれば、本書は私にとって大きな区切りとなる仕事であったと思う。
そんなわけで、いまや本書は私にとって少しばかり疎遠な存在になってしまった。だが、それはこの本を書いたのが私自身であったという個人的事情によるにすぎないかもしれない。ひょっとしたら、かつての私のように、本書の問題意識を必要としている人がいるかもしれない。いや、きっといるにちがいない。そう私は踏んでいる。
だから、このたび文庫版を江湖に問う私の心境は、単行本刊行時に「まえがき」で引いた大西巨人のそれとまったく同じである。すなわち、もし自著(文庫版)が本書を必要とする有志具眼の読者三百人に出会うことができたなら、それは望外のよろこびである。同じように、もしそれが三千部も売れたならば、「以て瞑すべし」であろう。しかし、著書をあえて公に刊行した以上、それが三億部か三十億部か売れることも願望せざるをえない。
思い返せば、私が大西巨人と出会ったのは、ちくま文庫版『神聖喜劇』によってであった。そのちくま文庫レーベルの末席に本書が連なることになろうとは。本書の著者にとってこれ以上のよろこびはない。
(後略)
【筑摩書房 近刊情報4/12発売】吉川浩満『増補新版 理不尽な進化 ―遺伝子と運のあいだ』(ちくま文庫)
進化論の面白さはどこにあるのか?科学者の論争を整理し、俗説を覆し、進化論の核心をしめす。絶滅から「進化」を眺め、アートとサイエンスを鮮やかに結ぶ現代の名著ついに文庫化。解説: 養老孟司 pic.twitter.com/dxblAhN6OF— 筑摩書房 (@chikumashobo) April 2, 2021
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