久しぶりに鳥政の昼食。ミニ焼鳥丼とラーメンのセット(通称「ラーメン」)。
食べながら、書店でいただいた『UP』の頁をめくる。
美しい文章。チャールズ・サンダース・パース、ハンナ・アーレント、ルイ・アルチュセールにかんする3冊の伝記をとりあげ、「環境との不適合に苦しんだ知性の劇」(p.45)に思いをはせる。
身も蓋もないことを言ってしまうなら、結局わが日本の近代は、環境との悲劇的な軋みそのものを精神の運動のダイナモとすることによって世界に通じる「普遍的」な仕事を成し遂げた、こうした巨大な知性を所有していないというだけのことなのか。麗しい富士の麓に抱かれたこの国では環境はその住人を多かれ少なかれ親密に包みこみ、アインシュタインにも比べられる知性を餓死寸前まで追いつめもしない(パースの場合――引用者註)。秀才哲学者の精神を狂気で苛んでみずからの最愛の伴侶を絞め殺させたりもしない(アルチュセールの場合――引用者註)。ましてや亡命と国籍喪失といった残酷な流浪体験を強いることもない(アーレントの場合――引用者註)。そんな国に生まれたことの幸福を寿ぐべきなのだろうかと、わたしはときに思い屈しないでもない。(p.47)
と書く松浦氏。いろんな意味で泣かせる。
本エッセイでとりあげられた3冊の伝記は下記(それぞれ大冊)。
- 作者: ジョゼフブレント,Joseph Brent,有馬道子
- 出版社/メーカー: 新書館
- 発売日: 2004/12
- メディア: 単行本
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- 作者: エリザベスヤング‐ブルーエル,荒川幾男,本間直子,原一子,宮内寿子
- 出版社/メーカー: 晶文社
- 発売日: 1999/12/30
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- 作者: ヤンムーリエ・ブータン,Yann Moulier‐Boutang,今村仁司,谷昌親,吉本素子,塚原史,下沢和義
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1998/10
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ちなみに松浦氏の作品でいちばん愛着があるのは下記(聞かれてないが)。
- 松浦寿輝『表象と倒錯――エティエンヌ=ジュール・マレー』筑摩書房、2001
- 作者: 松浦寿輝
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2001/03
- メディア: 単行本
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