数日前にブック・アサヒ・コム「次回の読書面」にて拙著『理不尽な進化──遺伝子と運のあいだ』の登場が予告され、ワクドキ(ガクブル)でお待ちしていたのですが、評者はなんと、あの島田雅彦さんでした。ありがとうございます!
筆者の筆はよく走り、時には哲学的、随想的逸脱も恐れず、この理不尽さに向き合った結果、さわやかな無常観が浮かびあがってくるのが面白かった。/カントの著作に『人類の歴史の憶測的起源』という創世記神話を考古学的に読み替えた論文があるが、本書は『種の起源』を生物学の要素還元主義にとらわれず人文科学的なオープンスタンスで論じた結果、多くの思考のヒントを供する寓話に仕上がっている。
「さわやかな無常観」「多くの思考のヒントを供する寓話」という言葉に、よろこびを抑えることができません。そのような作品を狙ってつくったのだとは申しませんが、私がそうした作品を愛しており、拙著もそんな作品になればいいなあと念じていたのでした(……ということが、島田さんの書評を読んで、初めてわかりました。また、文中でカントを挙げられていますが、これもおそろしい慧眼です)。優れた評者は、このようにして書き手自身にとっても明らかでなかった欲望をあらわにすることで、さまざまな喜怒哀楽をもたらしますが(今回は大歓迎の内容でしたが、必ずしも歓迎すべきことばかりではありますまい)、しかしそれこそ、書いたものを筐底に秘するのではなくわざわざ公表することの意義のひとつかもしれません(少なくとも私にとってはそのように思われます)。
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