キッチン南海カレー続報

ふたたび、キッチン南海のカレーについて。

 cf. http://d.hatena.ne.jp/clinamen/20041104#p1

ふと思い立って、わが書斎にてキッチン南海関連文書の捜索をはじめた。乱雑に積まれた書物の高峰が連なる劣悪な環境下での捜索活動は予想どおり難航をきわめたが、活動開始後75時間目にして、ついに重要資料を発見。B級グルメを自任する人気作家・浅田次郎先生の文章である。

まず駿河台下すずらん通りの中ほどに、私のガキの時分から毛ほどもちがわぬ味を提供し続けている「キッチン南海」。ここのカツカレーは絶品である。

長蛇の行列をたどって店内に入ると、カウンターの中には絶対に笑わぬコックが四人、忙しく立ち働いている。無愛想なのではない。笑う余裕などないほど緊張してカレーを作っているのである。店長と覚しき人物の目付きなど、まるで鷹匠棋士のようで、白衣の背中は旗竿でも立てたようにいつもピンと伸びている。

数十年も変らぬメニューはどれもうまいが、ことにカツカレーは一度食ったら病みつきになる。ガキ、学生、自衛官渡世人、小説家と、人生の有為転変に拘らず私が「うめえうめえ」と食い続けてきたのだからまちがいはない。その間、味はいささかも変わっておらず、値段は今日も六百五十円というのだから、まさしくB級グルメの鑑といえよう。ただし、数ある同名系列店のうち、この店だけがズバ抜けてうまいということだけは言っておく。

――浅田次郎『勇気凛凛ルリの色――四十肩と恋愛』講談社文庫、pp.217-218

わたくしは(さいわいにも)絶賛されている神保町店でしか食べたことがない。しかし、そこまで言われると実際に「同名系列店」との違いを確かめたくなってくる。と真夜中に俄然やる気がでてきた30代無職男であった(『失われた時を求めて』未読

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